神秘のチベット密教とは
厳しい環境が生んだチベット密教
世界の屋根と言われるチベット高原。永久凍土と呼ばれるその地は、年中凍りついており、短い夏が終わるとすぐに極寒の冬がやってくる。
標高3000mの高原では、酸素量も平地の三分の二、5000mを超えると二分の一になる。
こうした厳しい自然環境のもとで、チベットの人々は現代文明と隔絶されたチベット密教を創り伝えてきた。
それは単なる宗教ではなく、神秘的な医学をも含む全体系である。
チベット密教の誕生
チベット密教は、インド仏教の流れを汲み、7世紀ごろ「金剛乗」の法師・蓮華によって布教された。当時の教義は易しく「易行乗」と呼ばれていた。
その為、チベット密教は青梅、チベット高原に広がり、その過程で「時輪乗」を確立した。
その根本理念は、ヨガの手法を駆使し、体内の「生命の嵐」をコントロールすることで、時間の流れから人間の生命を解き放つという考え方である。
その中で重要な位置を占めたのが「気」であった。
チベット密教でいう気とは、「本性」や「真吾」と同義であり、「飾り気のない自然のままの我」を表す。
そして気は、人間の命の原動力とされ、気の強弱、清濁、明暗、厚薄は一人一人の健康や運命のバロメーターである。
気は生まれつき誰もが備えており、他人の気を読み取る能力も同様である。
チベット密教の5種類の気
①命気
頭部にある気。頸部や胸部の中心部を行き来する気。
命脈から生まれ出て、主に呼吸、飲み込む運動、くしゃみ、しゃっくりをコントロールする。
②上行気
胸部にある気。鼻、舌と食道を行き来し、主に発育や力の形成を司っている。
記憶力もこの気が強化する。顔に潤いをつけることもできる。
③ 遍行気
主に心臓にある気。全身を行き来もしている。四肢や五官(目、耳、鼻、舌、皮膚)の動きを司り、血液の流れをよくし、筋肉の伸縮をコントロールする。
④平行気
主に胃にある気。腸の各部分にも満ちている。消化機能に協力して食べ物から栄養分を取り入れ、カスを取り除く働きがある。
⑤下行気
主に肛門にある気。大腸や膀胱、性器と太ももの内側に満ちている。粘液、月経、糞尿の排泄を調整する働きがあり出産も司る。
こうした原理から出発したチベット医学は、神秘的力を発揮するが、いかに具体的な功法を紹介していく。
現在のチベット密教は、呪文や儀礼などは厳しい伝播制度の枠がはめられてしまっている。
つまり、誰でも簡単に修行はできないが、その中で比較的簡単に利用できるものを特別に選んだ。
密教念力気功の秘法の数々
①生死をコントロールする舎利源密法
この功法は、生と死を自己制御しようとするものである。
禅の言葉に「座化」「座亡」という言葉があるが、それは座弾を組みながら死んでいく、ということで、修行を積んだ高僧が、自ら生命をコントロールして死んでいく様を表したものである。
「舎利源」とは即ち生命を制御するという「生命制御球」の源という意味である。
舎利子は西洋では霊魂、東洋では芒種、般若舎利とも呼ばれ、これをコントロールできれば、生死をコントロールすることができる。
②念力を強化し脳細胞を活性化させる面壁気功
この功法は、念力を強化するために行う。念力が強くなるにつれて脳細胞の活動が活発化する。強い意志を鍛え、脳の衰弱を防ぐ効果がある。
③病気に対する抵抗力を強める蓮華生大士長生密法
蓮華生上師とは、すでに仏となった人の名前で、この功法は自分の総てを捧げ、最高の智恵を獲得しようとするものである。密呪、密印、密意を用いるが、科学的に言えば、宇宙との結合を緊密にし、強いエネルギーを体内に入れようとする試み。病気に対する抵抗力が強くなる。
④体質を強化する火陽功(大日如来火陽縁起密法)
チベット密教には、大乗仏教である黄教、霊力功の紅教、法力功の花(白)教、健康を中心とした呪文の黒教の四大宗派があり、この功法は紅教に属する。
宇宙の霊熱を通すことにより体質を強化することが目的であるが、火を固まりにすることにより、形のないものから形のあるものに転換させるという効果もある。
⑤心臓の病気を回復させる密教秘法
この功法は、心臓痛、高血圧心臓病、自律神経失調症に効果がある。
心臓をイメージし、心臓に百八個位の穴があるとイメージするのがポイント。
⑥腎臓病に効果的な還丹密法
この功法は、気で丹を作る方法。
丹とは、キリストの光輪やお釈迦様の後光のように、光の粒の中の一番大事なものを1箇所に集めたもの。
この功法を行うことにより、腎臓が活性化し、健康増進の効果が得られる。
腎炎、腎不全、その他総ての腎臓病に効果があるが、急性の場合は邪気の勢いが強いので、柔らかく分散させるために、丹をややゆっくり回し、慢性の場合は気の取り入れが効果的になるよう、丹を早めに回す。
⑦健康を維持して長生きをはかる龍樹蒿薩長生法
この功法は、全体的な健康維持と長生きに役立つ功法。
⑧集中力をつける大日観自在法
この功法の目的は集中力をつけることである。